第七回(2014年1月26日)

T それでは、あの、今年のベストを。
I 何の?
T まあ、ジャンルは、どれでも。
I (笑)
T 僕はその、ベルリンで何本か見たので、そのうちの一本が、日本にも来たことのある、ルネ・ポレシュと言う、作家・演出家がいますけど、あの人がやっぱり今、ベストだなと。
S そうですね、やっぱり今ポレシュが一番。
I えっと、僕はね、あえてこれを演劇というけど、エルヴィス・コステロ、アンド、えーっと、何だっけ、インポスターズのライブ(補足:『The Spinning Wheel Songbook』)。
S あ!
T それは、あの、
I ルーレットをまわして、
T 前に話題になった。
I そうそう、観客参加型のライブパフォーマンスですよ。エルヴィス・コステロがバンドで演奏するんだけど、ステージ上に巨大なルーレットがあって、巨大なルーレットを観客がまわして(笑)、で、止まったところに、えーと、止まったところの曲を演奏するという、パフォーマンス。
Y へえ。
Su ほお。
I で、ルーレットをまわしている間、エルヴィス・コステロはナポレオンダイナマイトというキャラクラーで茶番を繰り広げるというですね。
Y どこでやってたんですか?
I えっとね、六本木にできた新しいスペース。六本木なんて言ったっけな・・・(補:東京・EXシアター六本木)。麻布と・・・いや、六本木ヒルズのはす向かいぐらいの位置なんだけど、そこでやっていて、で、まあ、今までこう、ロックバンドが、演劇的な要素を取り入れるっていうことをやると、正義と悪が戦って正義が勝つみたいな(笑)
S (笑)
I とか、ロックを禁じられた未来の世界とか。え、小学生が考えたの、みたいな(笑)のが多かったんだけど、あのー、それをなんか軽々と越えていくというか、ま、本人多分それ演劇と思ってあんまりやってないと思うんだけど、これは演劇の文脈で評価した方が良いのではないかと思ったんですよ。で、ま、コンサート自体もすごく素晴らしかったんだけど。
S うーん。
I で、あれは、やっぱちょっと見といて良かった作品でした。ま、それでしょ。あとはやっぱり、ハイナー・ゲッペルスかな。で、あと、えーと映画に関しては、僕は『偽りなき者』ってやつを
Y ああ!
I 推します。今年のアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされてます。
S なすほど。
I はい。で、僕思ったんだけど、自分で、どういう映画が好きなのか、どういう映画っていうか、どういう物語を語ってると好きなのかっていうのを考えたときに、あの、腐っていくコミュニティを描いた作品がすごく好き
S (笑)
I だっていうのが分かって。
Su おおお。
T 身も蓋もない・・・。
Y すごい・・・。
I や、ほんとに、ほんとに!で、『偽りなき者』って、そういう作品なんすよ。あのー、まあ
Y こどもの
I そうこどもの
Y あれですよね。嘘をつく。
I 嘘をつく、っていう。こどもが嘘をついて、その、幼児性愛者というレッテルをはられて、コミュニティを追い出されていく男の話なんだけど。
Y そうか『偽りなき者』か。

Y 年末に、映画の、ま、仲間内で、今年のベスト10を、発表しようみたいな。で、それで、私はズルいので、ベスト10って10位から挙げてくんじゃなくて、こういうジャンルではこの映画、みたいに挙げました。
I ほお。
Y で、そこに集まった6人が全員挙げたのは『ゼロ・グラビティ』でしたね。
I あ、やっぱそうなんだ。
Y もう、すごい!
Su へええ。
Y あれは、もう、映画史に残りますよ。
T うん。
I えっとね、『ゼロ・グラビティ』、すごく、僕良いと思っていて、
Y うん。
I で、あの、何だろ、もっと僕、ストーリーを削っちゃって、良かったんじゃないかと思ってるんですよ。
Y ああ、あれ、でも、あの、すごくシンプルですけどね。
I や、あの、何だろう、サンドラ・ブロックがその、地球で、その子供がとかいう話とか、あれ、ここももしかして削っちゃって良かったんじゃないのかなあって、思っていて。あの、さっきちょっと坂田さんと話していたんだけど、今年の頭に、あの、浅田彰・坂本龍一・高谷史郎の鼎談っていうのがあって、で、あの、浅田さんがね、ちょっと面白いことを言っていて、ま、あの、高谷史郎の今回の作品(補:『明るい部屋』)が、まず、映画で言うと、リュミエール型の作品であるっていう、イメージをまず優先して撮るっていう作品だと、
T ほうほう。
I で、もう一つがメリエス型だと、で、メリエスはやっぱ物語だと。で、『ゼロ・グラビティ』って明らかにリュミエール型じゃないですか。も、イメージがとにかくこうあって、っていう、その連続。あれ、見てない?見てない?
T・S・Su (頷く)
I ああ、そっか・・・。あのね、見た方が良いですよ。
Y あの、南船橋にドルビーサウンド、すごい、あの
I IMAX?
Y あ、えと、南船橋の(補:TOHOシネマズ ららぽーと船橋)は、IMAXじゃなくて、
I じゃない?
Y TOHOシネマズが、日本で初めて取り入れた、縦長の、すごい綺麗なスクリーン(補:TCX)で、かつ、あの、360度、音が、こう
T ほお。
I ああ。
Y めぐるっていって。ドルビーなんとか(補:DOLBY ATMOS)っていって。まあ、そこがけっこう。IMAXか、そういうところで見ると、けっこう楽しいかと、
Su へえ。
T なるほど。
I あれ、映画館で見ないとダメな作品ですよ。
Y それはほんと、それで、3Dで見ないと意味ないです。
I うん。
Su そうなんだ。
Y うん、ほんと、そういう意味でも、新たな、あと、もう、これから数年間宇宙の映画は撮れないなっていう、感じ。
T ほおお。ま、宇宙の、『ゼロ・グラビティ』だから、宇宙の話。
I あのね、エンドロールでまず、普通は主要キャストの名前が出てくるじゃないですか。技術系の人が先に名前出てくる(笑)
一同 (笑)
Su へええ。
Y でも、ほんとに、もうあれ、すごい長年の、ずっと構想があったけど、技術が追い付かなくて、ようやく撮れたものなんですよね。
I そう。で、キュアロンも、あ、アルフォンソ・キュアロンって監督なんだけど、キュアロンも、いろんなところに、こう、企画持ちこんだんだけど、企画を持ち込んだ先で意味が分からんと、言われていて(笑)
一同 (笑)
I で、これ、この映画何なの?みたいなことをあちこちで言われただけど、結局、その、ハリー・ポッター(補:『アズカバンの囚人』)を撮っていて、で、ハリー・ポッターのプロデューサーが、うーんと、ちょっとよく分かんないけど、やってみようみたいな感じで、スタートしたという(笑)
一同 (笑)
Y あれ、ハリポタのプロデューサーなんですね。
I そうそうそうそう。
Y でも、ほんと、あと、あれ、一部、実は、これ噂なんでわかんないですけど、この、これで、撮影が
I iPhoneで
Y 撮影がされてるんですって。全部3Dで撮ると、3Dカメラってすごくこう、いかつくて、おっきいじゃないですか。ただ、作品の中で、こう、人にどんどん、ぐーって寄っていって、そのまんまこう、ヘルメットの中に入るみたいな。そういう近い撮影ができないので、一部をこういうので代用したりしてて
Su へえ。
Y もう、どんどん、あの、これ、でも、ほんとに、そんなの、でも、全然気づかないですよね。これもう、撮影技術っていうのが、いろんなところにまで発達しているっていう、ある意味。そんな感動もあり。とにかく、『ゼロ・グラビティ』はでも、そこにいた全員が挙げて、あと、割と人気があったのは『パシフィック・リム』と、
I ああ。
Y 『ジャンゴ』
Su ああ。
I あ、『ジャンゴ』って去年?
Y 一応、2013に入るんじゃないですか?
I あ、そうなんだ。
Y 多分。うん、でも、『ジャンゴ』、えー、そうですね。ま、けっ、あ、で、あと、あれだ。『世界に一つのプレイブック』。
I ああ。
Y あれは、4人ぐらいの人が挙げました。あれはでも、人によって分かれたらしくて。他の人が、また別のところで(ベスト10)やったら、『世界に一つのプレイブック』って自分以外、誰も挙げなかったのに、ここではみんな挙げるとか言って、
I あ、プレイブック
Y 私も挙げました。10本の中に。
Su ふーん。
Y そうですね。と、ドキュメンタリーで言うと『シュガーマン』がやっぱりすごい良かったですね。
I あ、シュガーマンね!シュガーマンすごい!
Y シュガーマンすごい。すごい!
I これがね
T つ、ついていけない・・・。
Y (笑)なんか、ただ好きな映画の話になってきたから、もうやめよう。
T いや、あの、いいのいいの。こういうのを、こういうのを、テープに入れて、後で起こして、それをこう、調べるっていうのが、我々の財産になるから(笑)。
Y あ、そうなの?ドキュメンタリーで言うと、やっぱ『シュガーマン』。
I 『シュガーマン』すごかった。あの、アメリカの、まっったく売れないミュージシャンの話なんだけど。これが、あの、南アフリカで爆発的な人気があったっていう。で、それが、あの、アメリカでは全く知られてなく。で、当時、アパルトヘイト、の、政権下。で、アパルトヘイト政権下で、その、プロテストソングとして、非常になんか重要な、アーティストとして認知されてたの。で、だけど、あの、アメリカの人は誰も知らない。
T ふーん。
I で、あの、どこだっけな。なんかね、ひっそりと暮らしてるの。デトロイトだっけな。デトロイトかどっかで、ひっそりと暮らしてるんですよ。今でも。で、
Y ほんとに、つつましやかな、暮らし。なんですよね。
I いや、これ、つくってんでしょって(笑)、僕思ったんだけど、ドキュメンタリーだって話だったんだけど(笑)。でも、その、ある、その、コレクターというか、その、熱狂的なファンが、その、シュガーマン歌ってるやつを探せみたいなことになって、で、探して、その、南アフリカで凱旋コンサートをやるっていう。
T へええ。もう、なんだか
Y もう、ほんとに、あれ、なんか、すごく評判が良すぎて、逆にちょっとこう引いちゃうんですよね。ほんとかー、みたいな。
I そうそうそう。僕もそう。
Y そうしたら、まんまと泣きましたね。
一同 (笑)

Su 演劇の方でいきますとね、僕はフィリップ・ジャンティ。
I あ、フィリップ・ジャンティ良かったよね!
Su あれは良かった!
I 良かった!良かったよ!
Su と、あと、まつもとでやった、『空中キャバレー』っていう、ま、どっちも、サーカスっぽいような、感じの。フィリップ・ジャンティは、サーカス、じゃないけど、ま、セリフもないね
I うん。
Su 身体表現で、いろいろ。あれはすごい良かった。『空中キャバレー』に関しては、もう、あれは、まつもと自体、やっぱり串田さんのまちになっちゃってるから。もう、好き勝手やってるんだよね。
一同 うーん。
Su まちでサーカス、普通に見せてあげたりとか。
Y・T へええ。
Su で、劇場にも、地域の人たちが来て。で、それもまあ、参加型っちゃあ、参加型で、普通の席には座らないんです。ずっと立ち見みたいな。ちょっと飲みもの飲みながら、って。そういうなんか、空間、劇場、なのに、もう、全然劇場空間じゃなくしてるなあって、いうような、使い方がやっぱりすごい良かった。思わず、立って、酒飲みながら、うぇーーーいーーーって!
一同 (笑)
I へええ(笑)
Su やっちゃうような空間、だったから(笑)

I 去年、だから、映、画の話をまた、させてもらうと、『愛、アムール』は良かった。
T ああ。
I ああいう、なんて言うの、こう、あの、生殺与奪みたいな話、の、映画多かったんすよ。去年は。
Y 『ピエタ』とかですか。
I 『ピエタ』とかもそうだし、あと、あれ、何だっけ、あの人『夜よ、こんにちは』の人、何だっけな。えーと、イメージフォーラムでやってたやつ。あの、安楽死をテーマにしたやつ。
Y 安楽死?
I 安楽死を国で認めるかどうかの、イタリアで。(補:ベロッキオの『眠れる美女』)
Y うーん、見てないですね。
I それと、あとね、『母の身終まい』ってやつで、で、それも、あの、お母さんが、安楽死を自分は選びたいっていう。
T うんうん。
I で、フランスは、安楽死は自殺ほう助になっちゃうからダメだって、それで、スイス、で、まあ、その、薬で、こう、死ねるっていう、施設があるんで、そこに行って、っていう話なんだけど。
Y 割と、最近の話ですよね。
I 去年の暮れぐらい。
Y うん、そのぐらい。
I なんか、割とそういうのが多かった。去年。
T スイスに行って、薬を?
I そう、スイスに行って、薬を飲ませてもらって、そこで、ベッドで***いく、みたいな話だったんだけど、『愛、アムール』と対照的で、その、それは、母親と息子の関係を描いてるんだけど、最後まで、も、こう、なんかね、愛情が裏返しになったような状態で、ずっと喧嘩してるっていう
T うーん。
I で、それで話が進んでいくんだけど、なんか、これ、対照的だなあって。僕は見ていて。で、その、『愛、アムール』に関して言うと、結局、その、ね、愛情みたいなところが高まったところで、こういう、ことじゃない。
Y ああ。
I で、その、『母の身終まい』に関しては、もう、すんげえ仲悪いんだけど、「お前死ね!」みたいなこと言って、
T うーん。
I でも、最後は、っていう終わり方なのね。
T なるほど、なかなか好対照のような。
I そうそうそう。それは、だから、両作品とも、フランスだとセザール賞、にノミネートされてますね。
Y 『愛、アムール』は、たしかキネ旬の
I そう、(外国映画で)一位になったの。
Y 一位になったんですよ。ちょっと、それはどうかと思いましたね、私は。
I ああ、それがね、キネ旬の一位がそれでしょ?二位なんだっけな?
Y 二位が『ゼロ・グラビティ』かな?
I あ、そう、二位が『ゼロ・グラビティ』で、三位が『ハンナ・アーレント』なんです。
T うーん。
I キネ旬どうかなこれは・・・。
一同 (笑)
T いや、僕は、今年、いや、去年一年の、その、映画の一位には、迷ったんですが、ま、『愛、アムール』
Y あ、ごめんなさい。
一同 (笑)
T ま、良いかなと。坂田さんは『ホーリー・モーターズ』
I ああ、『ホーリー・モーターズ』ね。
T 『ホーリー・モーターズ』僕はかなり迷いましたね。あれも、たいへん良かった。名画っていう感じではないけど。
Y けっこう、その、『愛、アムール』とか、『ホーリー・モーターズ』って、その6人の中でみんな見てるんですけど、みんな挙げなかった。やっぱり、その・・・
S ベタ過ぎる?
Y いや、ベタ過ぎるわけじゃなくて、なんだろう・・・でも、今までの作品と比べちゃうっていうのもあるし、
Su ふーん。
Y なんか、いろんな意味で、やっぱり、ちょっと期待値が高かったのかな?
S ああ、そっか。
T 僕らもそんなに、映画をたくさん見ているわけじゃないからね。見たものの中から選ぶから。
I 去年、僕は映画らしい映画をけっこう見たなあという気がしていて『ゼロ・グラビティ』もそうだけど、マイケル・ウィンターボトムの『いとしきエブリデイ』っていう作品があって。僕、それはすごく良いなって、思っていて。で、5年かけて撮っていて。で、子供たちが、だんだん大きくなっていくんだけど。あの、普通、映画の手法だと、5年かけてっていうのを描くのに、あの、大きくなった子に、もう、違う子をあてるっていう、割と常套手段なんだけど、おんなじ子で撮ってるんですね。
T うーん。
I で、あの、非常にドキュメンタリー的な手法を使いつつ、物語、の映画になってるっていう。で、これは、なんか、こう、演劇だとちょっと難しいなっていうふうに見ていて。で、これは映画ならではの手法であるし、で、映画として撮る必然性があるなあと思って。見ていて。
T えーと、ちなみに6.5/wは年度で、動いてますので、年度末にまた
I そうなんだ!?
T 今日のこれは中間報告
I なわけね(笑)