第十回(2014年7月14日)

S どくんご、ね。面白かったんですけど、私ね、改めて、アクチュアリティって何なんだろうって。
I はあ。
S それでね。どくんごって、すごく、たいへん、面白かったんですけど、割と、抽象的に話が進むじゃないですか。
Mo ああ。
S それで、実はね、作り方も、すごい、面白いのね。やばい。ちょっと、酔っててね。真っ直ぐ話ができない・・・。
T (笑)
S えーとね、どくんご、という劇団があるんですよ。で、すごい、今、40代?ぐらいの人たちかな?が、が、も、「とにかく見ろ!」って言うのね。で、あたしも、名前だけは聞いてて、で、ようやく見に行けたんですよ。我孫子公演を!
Ha (笑)
I 分かんない。
S も、「千葉ならば行かねば!」って(笑)、思って。
Ha うんうん。
S で、で、どうも、作り方がすごい面白いらしくて。で、出演者で、一年間ほぼずっと一緒にいるんだって。
I へえ。
S 最初の4か月間。あ、冬の間だけ稽古場で貸してくれるって人がいて、農閑期で。そこで、みんなで4か月間ずーーーっと一緒に暮らして、で、作品を作ると。
T うんうん。
S で、5月から。あ、どくんごって人気だから、日本中で受入先がある。公演場所を、頑張って用意してくれる人たちがいるのね。で、みんなで、まわって、旅、公演をしていくと。
T テント芝居をやる。
S そうそう。テント芝居。野外。で、(2014年の千葉は)我孫子の!手賀沼のほとりで!
I まあまあ。
T 別に、神奈川県民にとっては、全然分からないけど。
S 校外学習で、私は行ったよ!
Ha 私は行ってないですね(笑)
S え!我孫子と言えば手賀沼!手賀沼と言えば日本で一番きたない、って・・・(補:以前の話で、2000年に北千葉導水路が完成してからはワースト1ではないよう。ただし2012年は手賀沼はワースト2位で、1位は同じ千葉県の印旛沼・・・)。ま、いいや。で、すごく、ポエティック?抽象的な芝居で、「どうやって作ってるんですか?」って聞いたら
I うん。
S なんか、3日に一回、一人芝居みたいなものをずーっと出していって、で、淘汰してって、最終的に、(上演される形に)残るっていう。あ、で、しかも、その土地その土地で幕間にゲストがいる。
T うんうん。
S で、書割は、も、全然別に依頼しちゃうんですって。(芝居の)中身が決まる前から。
T ああ。
S (芝居の中で)背景、書割が、どんどん変わってく
T はいはい。
S でも、どういう作品で、どういう書割が必要かとか、決まる前から、依頼したり、自分達で描いたりし始める(笑)。だから、一貫して、ものをぽんって作るんじゃない。(受け入れ先やゲストも含めて)その土地まで行って、初めてできる。
I ふーん。
S 最初から、ああいう作品を作るつもりじゃなくて、いろんな、ギャンブル性というか、偶然?の要素が加わって、初めて完成するみたいなんですね。これはすごく面白いなって。
Mo そうそう。
S あ、でも、我孫子はほとんど東京だよ。
I ディズニーランドとかの話してる?
S 違うから!(補:ただし、手賀沼ディズニーランドという話はあったらしいです・・・)

S 確かに、どくんごのファンの人たちが言う通り、何か、***とか他のテント芝居を見に行ったときにある、「懐かしひテント芝居感」はないの。
一同 ふーん。
S それが、どうしてなのかっていうのが言語化できなくて・・・。見に行った感じ、とにかく楽しかったんですよ。その場にいて。ただ、アクチュアリティとか批評性とか、そういうのとは違う。
I ふーん。
S だから、最終的に加点が難しい。でも、とにかく、いて、すっごく楽しい空間だった。しかも、他の、いわゆるテント芝居みたいな、まあ、古めかしい感じは、全然しない。その辺りを、誰か言語化してほしいところだよね。
Mo じゃあ、飲み会まで参加したんだ(笑)。
S そう!「これ、どうやって作ったんですか?」って聞きまくる、ちょっと怪しい人と化してた。
I (笑)
S で、お客さんの反応とか、その土地のゲストとか、そういうのですごく芝居が変わるんですって。それで、皆さん追っかけて、旅についていくんですって。
Mo まあ、芝居の中身が変わることはないの。台詞が全然変わるとか、そんなのはない。ただ、役者のコンンディションが、すごい変わる。
S ああ!そうですよね!テントですもんね!
Mo そうそう。「ああ、この前、すごい体調悪かったんだな」とか、「声、全然出てなかったよな」とか、「今日コンディションいいじゃん」とか。
T まあ、現代、ほぼ他にいない。テントで、しかも全国をまわるような劇団。面白い存在であることは間違いない。で、土着のコミュニティに近いような、あの、横のつながりを、こう、使って、芝居をやっていく。しかも、都市の住人も、こう、スッと入っていけるような、オープンな面もある。ここも、すごく興味深い。

T アクチュアリティについて、ちょっと説明した方が良いかな。
S あ、そうか。
T 現代性、現在性って言うけど。例えば、ま、僕はドイツ演劇の研究をしてるから、ドイツの話をすると、その、戦後60年代から70年代にかけて、アクチュアリティと言うのが、一つ大きなテーマだった。シェイクスピアのハムレットだったら、ハムレットをなぜ今やるのか、なぜ今ここでやるのかっていう、分かりやすく言えば、その、現代の我々にとって何が重要かっていうのを、その上演を通じて考えるっていうことですね。だから、ただ単にハムレットをハムレットっぽくやるっていうことではなくて、これは、我々自身の問題なんだと、だから、例えば、あー、状況を、現代の様々な状況に置き換えるとか。そこに、いろんな再解釈を持ち込んで、えー、そうね、アクチュアリティを上演に探していくっていう。
S うん。
T それが、まあ、けっこう、ま、「ブーム」と言えば「ブーム」になったんですわ。
Mo ああ。
T ただ、まあ、ここ最近、2000年代ぐらいになって、また、それはそれで、ちょっと、それ「ばかり」が演劇の面白さではないのではないかと。という波もまた出てきている。で、日本では、そもそも、あまりアクチュアリティがどうこうという話は重要視されていない。かな。
Mo うん。
S あ、でも、どくんご、基本的に、抽象的なセリフで展開していくんですけど、一回だけ、何だろう、へんた・・・あ、ネタバレしちゃうかな・・・、ま、いいや、変態の宇宙人を捕えんとする宇宙刑事が出てくるんですよ。
Mo うん。
S で、変態たちが、あのー、しじみの匂いが、あ、しじみの味噌汁の匂いがする
Mo もう、わけわかんない(笑)
T わけ分からない。
S で、変態たちが、デモをしてるんですよ。で、そいつらが、何だかの「推進派」らしくて、「推進派」っていう単語がポロっと出てくるんですよ。
I うん。
S で、その、単語が出てきた瞬間に、客席が、あの、凍り付くわけですよね。だから、やっぱり、こういう単語を出すってだけで、何か、あの、(日本では)難しいんだなって。
T うーん。
S だから、そういう単語に、あえて触れずに、何というか、苦悩?右往左往?する姿みたいなものを、いくつもいくつも出す事で、何かを表現するっていう方向に行ったんじゃないかなって。ま、でも、その、この、触れられない感じって何なんだろうって。
I ふーん。
S だた、土地柄、我孫子だったからかも知れないです。我孫子、ちょっと放射線量が上がったことで話題になったんで。
T うーん。
S ただ、アクチュアリティって話になったときに、こう、「アクチュアリティがあるのがイイよね!」って言うけど、なんか、どこかやっぱり、こう、ヨーロッパで見たものが日本でも見たいっていうのの域を出ていなかった人って、多かったんだなあって。
I うん。
S こういうのはすごいショックで、だから、じゃあ、日本でのアクチュアリティって何なんだろうっていうのには、あんまり、こう、蓄積が、なくて
I ないね。
S ないんだなあって。これは、最近、分かって
I うん。
S ショックだった。

M(り) 反省会っていうのが、毎日、どくんごではあって。あたしは、行ったらいつも、何故か、チョコンと座ってるんですけど。
一同 (笑)
M(り) で、「いやあ、りーさんの友達の坂田さんが」って、「りーさんの友達の坂田さんが」って(笑)
Mo (笑)
S ・・・あたし何かマズいこと言っちゃったかな。けっこう、失礼なこと聞いちゃったかも・・・・・・。
M(り) うーん?すっごい、興味は持ってた、みんな。
S 良かった・・・。
M(り) 何か、どくんごの反省会は、話して良いのか分かんないけど、順番に、自分の反省と、それ、以外の人の反省
S おお!
M(り) ツッコミもして
T ふーん。
M(り) 最後に、あの、(毎回)打ち上げをするから、打ち上げのときに聞いた、みんなの感想?良いものも、悪いものも。「すっごい良かった」っていうものから、「意味分かんなかった」っていうのまで、ぜーんぶ。一人、一人、言っていって、最後にどいのさんが〆るっていう(笑)
S 情報共有するんだ!
M(り) うん。毎日、毎日。やってんの。
S そういう仕組みなんだ・・・。
一同 うーん。
M(り) 最終日だけしないけどね。
S あ、そうなんだ。
M(り) 公演があった、次の日、朝、ま、ぐだぐだ、じゃないけど、みんなで起きて、大体9:30ぐらいから作業始めて、10:30からごはんが始まって、ごはんが食べ終わったら、みんなでじゃんけんして、負けた人が、皿を洗う。
一同 (笑)
M(り) それもね、ちゃんと共同生活を続けていくための知恵として、ね。
S じゃんけんというギャンブル性を。
M(り) みんなで楽しく生活するためにね。あたし、今年まだ一回も負けてないんだけど。
一同 (笑)
Mo 反省会はどのタイミングでやるの?
M(り) その、じゃんけんして、うわーってやった後に、んっと、もう、すぐ反省会が始まる。
Mo 翌日やるんだね。一回寝かせる。
M(り) そうそう。ま、寝かせるっていうよりは、夜できないっていう。
S (笑)
M(り) ほんとは夜やりたいんじゃないかな。
S 私、(夜の)12時に寝るって感動したもん。
M(り) ん?寝てない。
S あの後寝てないんだ。
M(り) んー、いや、寝てるけど、あのー、何だ、公演地とか、そのときの、客のハケ具合?
Mo そうですね。
M(り) 早く終わるときと、全然おわんないときがある。
S そうなんだ。
M(り) 昨日?一昨日?まで、あたし仙台に行ってたんですけど、仙台公演の二日目は(朝の)3時ぐらいまで(打ち上げ)やってた。
I ああ。
S それって、土地柄?状況?
M(り) うーん、終電がないっていうと、けっこうゆっくりになるね。だから、東京とかは早い。
Mo そうだね。
S そうか、終電で帰るからだ。
Mo 北九州も遅かったよ。だってあの時、私が(朝の)2時ぐらいに帰ったけど、まだみんないたもん。

S 最近見た面白い作品で、松平さんの
M(り) あ、うんうん。
S あー、松平さんという方がいるんですね。街宣車(補:外山恒一さんの原発推進派ほめご・・・もとい大絶賛キャンペーン)に、初日に乗って、で、「徒歩で」同じことをやったという方がいるんですけど、あー、上手く説明できないかも。
Mo (笑)
S それで、ざらすとろさんて人がいるんですよ。で、
M(り) あの人何者なんですか?
S あのですね。この方って、官邸前で、多分、野田首相のとき(補:2012年7月1日とのこと)だと思うんだけど、「野田首相に会わせてください!会わせてくれないなら自殺します!」って、やって、逮捕されちゃった方なんですって。
一同 おお。
S で、これ、直接因果関係があるわけではないんですけど、別の機会に、松平さんが、ざらすとろさんに「言うだけじゃなくて、何かやってみせてよ」みたいなことを言ったことがあるんですって。
I うんうん。
S そうしたら、ざらすとろさんが、抗議活動の中で逮捕されてしまったと。まあ、ざらすとろさん自身は、別の機会に、「逮捕されたときに、護送車の中と外では、外側が牢獄なのではないかと分かったのは良かった」というようなことも言われているんですけど。
一同 うーん。
S あ、で、松平さん自身は、女装を、される方なんですね。で、その松平さんと、もう一人朧塚さんて、この方も女装される方で、で、あと、ざらすとろさんの三人で、松平さん家(ち)で、カレーを作るというイベントをやっていたんですよ。
I (笑)
S 素晴らしくって!あたし、やっぱ、こういうのにヨワいんだよ!って思って。
I うん?その三人が集まったのは、別に女装してカレーを作るとかじゃない?
S いや、なんか、松平さん家でカレーを作る会を開催しますと、で、それを、ツイキャスで配信しますと。
I あ、はいはい。
S で、来たい人は、来て下さいみたいなイベント。で、集まったのがその三人だった。
I あー、なるほどね。
S しかもね、カレーを作るって、なんか、あたし、ハウスバーモントカレー的なのをイメージしてたの。違うんだよ!
I 違うんだ!?
S ちゃんとインド料理なの!「これが、マスタードシードです」みたいな。
I あー、スパイスを使って?
S スパイスを使って!で、その三人が、カレーを作りながら、社会問題について語っているの!
I あー、でも、そこはさ、逆にハウスバーモントカレー的なものであってほしかったな。むしろ。
Mo (笑)
S そしたら、もっとかわいかったなとは思いました。でも、
I 本気じゃん、だってそれ。
S でもね、ナン(補:正確にはチャパティ)焼いてるんですよ!超すごい!
I だから、本気じゃんそれ(笑)
S (笑)
M(り) いやあ、なんかそこが良いですよね。
S ま、確かに、最初、もっとかわいいのかと思ったら、意外とかわいくないなと思ったんですけど、ナン焼いてるのを見たときに、これはすごいなと思った(笑)
I ああ。
Mo すごい、ナンまで焼いてる(笑)。ナンまで焼くってすげえなそれ(笑)。
一同 (笑)
Mo 普通そこまではできない(笑)
T 坂田さん、6.5/wを始めたときからそうだけど、そういう「生活感」みたいなのが、なんか、好きだよね。
S そう、あたしね、窓から見える生活の風景みたいなのが、すごい、好きでね。
I あ、分かる。
S ほんとに!?
I すっごい分かる。
S 良かった!
I あの、さっき、僕、寮生活だったって言ったじゃない。
S うんうん。
I 一週間に一回、家に帰るんですよ。土曜日に帰るの。で、日曜日にまた寮に戻る。で、寮に戻るとき電車に乗るんだけど、大体(夜の)7時ぐらいなの。
S おお。
I (夜の)6時ぐらいにさ、電車乗るんだけど、電車乗ると、6時ぐらいに、ちょうど、サザエさんを見ている家に
一同 (笑)
I 家が、見えるわけ。あの、その、電車の車窓から、その、窓開けてる家が
S うんうん。
I 見えるわけ。で、も、それ見てると、なんか、うーん、えっと、人の家を覗いてる、のではあるんだけど、あのー、そこに、自分が、今、持ってない生活がある。
S そうそう!そこに、(誰かが)いる、っていう、痕跡っていうか、残滓っていうか。
I そうそう。そうなんだよ。

S ピナ・バウシュって元々本人が踊ってたのと、「振付」として、他の人が踊るのだと、本人が踊ってる方が、ストーリーみたいなのは見える気がする。っていうか、違う感じになる気が、する。
M(り) 違うんだけど、ピナの息づきみたいなものは見えるよ。そこが、振付家としてすごいなーって思う。
I うん。
M(り) いや、そこですごいって思うことあんまりないからさ。大野一雄とかだとさ、大野一雄がやるからいいんであって
I そうね!
S あたし、知らないんだけど、大野一雄がさ、ボケちゃった後に、なんか大野一雄を車椅子に乗せてさ、っていう作品があるんでしょ?
I うん。あるある。ずっとやってた。
M(り) 超、伝説だけど、どれも、
S そうなの?
M(り) 一回も見てないけど、彼が、こうやって、あげただけで
S 宇宙が見えるってやつでしょ?
I そう、あのね、すっごい不思議だったのが、あのね、あれ、大野さんがちょうど100歳のときだったかな。
一同 (笑)
Mo えっ!?
S あ、103歳くらいで亡くなったんです。
I それも、もう、車椅子だったんだけど、
Mo すごい(笑)
S すごーいんですよ。
M(り) そうそう。
I ピアノとアフリカンパーカッションの人達が、あの、共演する中で、大野さんが出てきて、あの、まあ、一応、公演として成立させるんだけど。
S うん。
I その、単にピアノの演奏があったときは、大野さんて、車椅子に座ってるだけで、かーってなってるんだけど、ところが、アフリカンパーカッションの人達の、リズムが入ってくると、いきなり反応して、かーーーっと踊りだしたのよ。
Mo・S・T えーーーーーっ!
M(り) 素晴らしい。
S もう、生きる事が、アートっていうのの極致にたどり着いた人なんですよ。
I そうそう(笑)
S もう、なんか、何をしても美しいみたいな。
I うん。で、
M(り) そこにいきたい(笑)
S いきたいよね!
M(り) いきたい!
S 憧れる・・・。
M(り) あれしかないよ。
I その瞬間、もう、客席、がーーーって盛り上がって!
M(り) うんうん。