2013年3・4月『おばけのはなし』 於:にわのとり

 

[演出ノート]

 数年前、戦地の子どもに一番怖いものは何かと聞くと「おばけ」と答えるという新聞記事を読んだことがありました。この話には分かりやすい説明があって、例えば庖丁を持って次々に人を殺していく大きなおばけを描いた子は、近所で虐殺があったのを目撃したんだそうです。と、説明されるとつまらないと思う方もあるでしょうが、私はここでずっと立ち止まっています。

 当時、私は「では、おばけとは、虐殺という人の罪を覆い隠してしまうものじゃないか。」と思いました。少し年月が経ったとき、「でも、その虐殺は何故起こったのか?そこに至る過程を解消しない限り、個人が裁かれることもまた隠蔽への加担にはならないのか?」と考えるようになりました。もう少し時間が経ったとき「でも、その子はそのおばけが実在の人だったと考えるより、架空のおばけだったと考えることで折り合いがついたんじゃないか。その自己暗示のようなものもまた人の本能によるものなんじゃないか。」と考えるようになりました。

 数年来、私はこのおばけについて考えていますが、答えは出ず、最近では安全なところからあれこれ考えている自分に後ろめたさのようなものまで感じるようになりました。

 今回は、そんな私の変化あるいは進化を形にしてみました。

 

寄稿文

 

[公演日程]

2013年3月30日-4月1日 にわのとり

 

[出演・スタッフ]

構成・演出   坂田 尚

ドラマトゥルク 寺尾 恵仁

構成チーム   稲葉 雅巳

        はしもと あさこ

 

出演     (不在の主演女優)

        寺尾 恵仁

        鈴木 啓司(劇団銅鑼)

 

当日制作    砂田 麻里子

 

企画・製作   6.5/w